こどもみらい園は、本質を追求します。当園の役割には独自の特色がありますが、<めざす教育の姿>には、世界に通じる本質的な価値があると信じます。教育の目的は、「教えること」ではない。教えることは一つの過程であり、手段です。教育の目的は、「育てること」なのです。良き能力、善き心を育て、生きる力を養うことなのです。私たちのシンプルな教育理念には、地域や時代を超えた普遍性と不変性があります。
今回、開園予定の「東京未来大学こどもみらい園」は、これまでにない新しい学園です。ご承知のように、
この世に生を受けた子どもたちには、すべての子に、その子なりの「みらい」があるはずです。でも、一人
ひとりの子どもたちにとって現実は決して甘いものではありません。どこの国の、どんな地域の、どんな
家庭の子に生まれるかによって、その子の運命のかなりの部分が、決められるケースも、決して少なく
ないのです。
私も今日まで、いわゆる“発達障がい”と呼ばれている子どもたちと数多く出会ってきました。最近では、遺伝子解析の技術が発達し、しかも比較的簡単な親の検査により、生まれてくる前に、その子の障がい発生の確率が予知できるようになりました。現にこの検査の結果で妊娠中絶を覚悟し、実行する親が現れるまでに至っております。
しかし、余りにも有名な世界の発明王トーマス・エジソンの場合はどうでしょうか。ご承知の方も多いと思いますが、彼は小学生の頃、先生から“発達障がい”の烙印を押され、学校を辞めさせられてしまったのです。
その最大の理由の一つは、学校の先生が教える「1+1=2」の計算を、頑なに受け入れようとしなかったことでした。この時、エジソンの頭にあったのは、粘土の塊のことでした。団子にした粘土の塊を二つ合わせると、一つの団子になる。つまり「1+1=1」だというわけです。幸いなことに母親が学校の先生だったために、無事学業も家庭で習得できたわけですが、そうでなければ、大発明家エジソンは、永遠にこの世に生み出されずに終わってしまったことになります。
こどもみらい園では、発達の問題を、可能な限り、その子の個性と捉え、潜在的能力を伸ばす事はできないかと考えようとしています。むろん、すべての発達障がい児に対応できる話ではありませんが、少なくとも、エジソンを切り捨てる重大な過ちだけは、決して犯されないことを心掛けてゆきます。どうぞ、こうした姿勢のわが“こどもみらい園”の先生方を信頼し、お子様の未来にご期待下さい。教職員一同、皆様方のご入園を心からお待ち申し上げております。
1926年生まれ。東京大学文学部哲学科(心理学専攻)卒業、同大学院修了。1973~1989年、千葉大学教授。在任中の5年間、附属小学校校長を併任。心理学者。千葉大学名誉教授。東京都「心の東京革命」推進協議会会長。日本創造学会名誉会長。NPO法人「0歳からの教育」推進協議会理事長。『頭の体操』シリーズなど著書多数。2007年、東京都より「名誉都民」の顕彰を受ける。東京未来大学 学長を経て、現在、東京未来大学名誉学長。